約6mのサバニに真竹で作ったアウトリガーを付けてみたので備忘録。

このサバニにアウトリガーを付けていきます。
このサバニはその形状ゆえに、初心者の自分には少し操船が難しめで、舷側の上に杉板で作った「ワージ(波よけ)」を後づけして乗ってました。
ちなみに、ワージの制作はこんな感じで行いました。

ワージをつけると、ある程度風を受けたりバランスを崩して船がヒール(船体が横に傾く)しても水は入りにくく沈(転覆)する頻度も下がるのですが、それでもやはり操船の難易度は高く、自分には気軽に人を乗せたりできる感じではありませんでした。
というわけで、このサバニにアウトリガー(船体の横に突き出して固定される浮き)を付けてもっと気軽に楽しめる仕様にすることにしました。イメージ的には自転車の補助輪に似てるかも。

というわけで、まずはワージを取っ払いました。
アウトリガーの素材
サバニのアウトリガーには、木製やウレタンホーム(+ポリエステルレジン)、スタイロホーム(+エポキシ)をグラスファイバーで巻いたものが多いイメージですが、今回は真竹で作ろうと思いました。
真竹を選んだのは、作る手間が少なそうでかつ風合いが木製のサバニと違和感なさそうと思ったからです。
真竹の購入
真竹は、油抜きのものを県内の材木屋さんで購入しました。材木屋では、
- 6.5m×直径約8cm
- 5m×直径約10cm
の2種類の真竹を扱っていました。ある程度浮力を考慮して容量が多く、かつサバニ本体の長さともバランスが取れそうな5m×直径10cmの真竹を選びました。ちなみに価格は税込み6,600円でした。
いずれも県産ではなく本土から仕入れる材なので、購入するときは入荷直後に行って、割れが無く緩やかにアールになっているものを選ぶのが良さそうです。
下準備
まず真竹は、直射日光などで熱を持って膨張すると割れる事があるので購入したらできるだけ屋内に保管しておくのが良さそうです。
アウトリガーにするためには、まず竹の節(内側)を全て取り除きます。これは、熱による膨張で竹が割れるのを防ぐためです。端から長めの鉄筋や棒を突っ込んでガシガシすれば簡単に節は割れます。
次に、節の外側部分をなだらかにするためにサンダーをかけます。

節の部分を削った目的は、水中での抵抗を減らすためと、グラスファイバーを巻きやすくするためです。
こちらが節を削ったあと。だいぶなだらかになりました。

それから、竹の先端と末端に杉材で蓋をします。この蓋の形状は、水との抵抗ができるだけ少なくなる形状にします。もし購入した真竹が全体的にアール(曲線状)になっていたら、サーフボードでいうロッカーのように先端に向けて反る感じで向きを決めて使うと水面との抵抗が低減できてよいかもしれません。

グラスファイバーを巻く
今回は、竹の購入後に屋外保管していたら一部にヒビが入ってしまったこともあり、また、アウトリガーとして使っていればそのうちぶつけたりして衝撃が加わることも想定し、竹全体にグラスファイバーを巻いてみることにしました。
グラスファイバーは、Amazonで「200 FRPガラスクロス 幅1M×長さ1M」というものを税込み1,633円で購入しました。
Amazon | ホートク #200 FRPガラスクロス 1mパック | 補修材 | 産業・研究開発用品 通販
で、実際巻いてみて感じたのですが、節の部分を削り落としてたとはいえども、竹は単管パイプや塩ビ管のように真っ直ぐではないので、ガラスクロスを乗せるといろいろなところに歪みや浮きが出てきました。次回もう一度この作業をするなら、今回の#200ではなく薄手(#100)のガラスクロスを使用もしくは積層したほうが素材の曲線にうまく馴染んできれいに仕上がるような気がしました。


グラスシートのコーティングに使ったのは、
Amazon.co.jp: コニシボンド E206 3kgセット: 産業・研究開発用品
です。普段、船体の修復などに使っているエポキシは
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ですが、今回アウトリガーのグラッシングにE206を選んだ理由は、容量が多くかつメルカリで安く売られていたからです。(2缶6Kgで送料込み6,000円!)
実際に使ってみて特に問題は感じませんでしたが、注入補修用なせいか少し粘度が低めだったので、グラスシートに塗ったらタレが残ってそのまま硬化しないようにしっかり薄く伸ばすことが重要でした。
今回は、初めて#200のグラスシート+竹でグラッシングしたのですが、かなり気泡が入りまくってしまったので、硬化後に気泡部分はグラインダーで削り、その大きさに切り取ったグラスシートを再度張り直し、エポキシを塗るという作業をして、全面をFRPコーティングしました。
FRPを削ると細かい粉塵が出て体に悪そうなので、防塵メガネ・防塵マスク必須。
紫外線対策
エポキシは紫外線に当たると劣化・変色しやすいので、UVカット剤を塗っておきました。170mlを2缶使って2度塗り。
Amazon.co.jp: GSIクレオス Mr.スーパークリアー UVカット つや消し スプレー 170ml ホビー用仕上材 B523 : ホビー
空気抜き
真竹は節を抜きましたが、先端と末端には蓋をしてあるので、ここままだと結局内部で膨張した空気はどこにも抜けません。夏の屋外に放置して空気が膨張、割れ・・・というケースも無くはないと思うので、空気抜きを追加します。役割的にはSUPのソフトボードなどについている自動調整エアーバルブ(外部からの水の侵入を防ぎ、ボード内部の空気圧を自動で調整するプラグ)のような感じです。
今回は、末端の蓋部分(杉材)に直径4mmの穴を開けて貫通させ、同じサイズのビニールホースを差し込みました。そのホースは柔軟性のあるセメダインXで固定し、先端をアウトリガーをサバニに固定したときに上の方に来るようにタイラップで固定しました。
ホースの中には海水が逆流して入らない(かつ気室が密閉されない)ように、スポンジを少し詰めました。

理想的にはもう少し良い感じにおさめたいところ。
そして、海に浮かべてどのくらいの浮力があるのかテスト。さすがに70kgの体重をかけると沈みますが、そこそこ浮力はあるようです。

ちなみにこの真竹の浮力を計算してみると、竹の厚みを考慮して内径を9cmとした場合、その容積は
0.045*0.045*3.14*5*1000=約31.8リットル
です。約31.8リットルの容積の空気で浮かすことのできる重さは約31.8Kgとなります。竹自身の重さも考慮すると、もう少し少なくなるのかも?いずれにせよこの浮力で6mサバニを安定させることができるのかどうかは、計算式がわからないので実際にやってみてのお楽しみです。
サバニへの取付け
アウトリガーの浮力体がほぼできたので、これをサバニ本体に取り付ける方法を考えていきます。
必要なのは、
- サバニと浮力体をつなぐ腕木(横棒)
- 腕木をサバニ本体に固定するベース
の2つです。
先に、ベースを作りました。材は杉です。

ウシカキと同様に、ウチグマとウワグマと噛み合うように作りました。

アピトンで作った抑えの板とアカナーで船体に固定します。舷側に開けた穴は3.5mm。このベースは前後の2箇所です。
それから腕木(横棒)を用意。どのくらいの太さや形状が適当なのかよくわからないので、とりあえず入手しやすい60角の杉材を使ってみます。

この腕木と浮力体を固定するために、以下のような固定用パーツを作りました。

理想的には、腕木は海面から離れていたほうが波の影響を受けにくいと思われるのですが、腕木が水平になるには浮力体との固定部の強度を考慮する必要もあり、難しそうだったのでまずは、腕木は斜めに下ろす感じで浮力体とはほぼ直接固定することにしました。

こんな感じです。ちょっと微妙感は拭えませんが、まずはこの浮力体が機能することを確かめたいと思います。ちなみに、船側のベースと腕木の間は斜めにカットした90角の木っ端が入ってます。腕木の間隔は増設予定のサシカの位置を考えて適当な位置を決めました。腕木の長さ=船体と浮力体の距離は適当です(が、なんとなく長いほうが強風にも対応できそうな気がします)。
そして海へ!

思った以上にバッチリでした。
アウトリガーの効果は十分すぎるほどで、意識して船上で体重移動しても、まったく怖さを感じません。単船とは全く別の乗り物になりました!
この日は凪だったせいもあり、浮力体側で水面に近い腕木に波が当たって抵抗になるということも全くありませんでした。
改良
とはいえ、やっぱり腕木は水面から離したい…ということで、改良することにしました。腕木を水平にした時に浮力体から15cm程度の高さで作ります。もしかすると、もう少し低くしてもよいのかもしれませんが、竹の浮力体の重さと船のバランスなど、考える要素が多すぎるのでとりあえず作って試して考えることに。

浮力体が波を受けたり水中に刺さるなど、水との抵抗が大きくなると、この固定部分に前後方向に力がかかりそうなことや、腕木とは左右方向で固定する必要があることなどをもんもんと考えて、こんな形の固定具を作ってみました。竹はアカナーで強く縛ってます。前後方向の力も耐えられるように、60角の腕木に当て木もしてみました。


そして海へ!再び

バッチリでした。改良型は、見た目もいい感じだし、腕木もしっかり水面との距離を保ち、アウトリガーとしてもきっちり機能してくれました。
今後やりたいこと
- もう少し風と波がある状況で検証する。
- 前列の漕ぎ手がエークを後方まで残すと腕木に当たることがあるので、腕木を少し削る。おそらく、60角だと強度は十分すぎているので多少削っても大丈夫そう?
- 90角材で作った腕木と竹の固定パーツの形状が無骨なので、少し削って抵抗を下げる形にする。
- 前後腕木の間にネットを張って荷物置きスペースを作る。
- 最終的に仕様が固まったらアカナーで縛っている部分も含めて固定パーツと竹の浮力体をエポキシで固定する。

自分で試行錯誤して作ったパーツを乗って試せるのはなんとも面白い😊
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